日本蜜蜂を飼育するには、日本蜜蜂の生態については最低限知識が必要です。まず、日本蜜蜂の基本的な生態や、飼育している人などの基本的なことがらを勉強しましょう。

日本蜜蜂は在来種

日本蜜蜂は、日本に昔から生息する在来種のミツバチです(注1)。木の洞(うろ)などの閉鎖的な空間に巣を作って生活しています。

また、人間が住んでいる地域では、民家や小屋などの屋根裏、壁の間、床下、お墓の中などに日本蜜蜂が巣を作ることもよくあります。

隣国の台湾や韓国、中国、さらにはタイなどのアジアの広い範囲にトウヨウミツバチが生息しており、日本列島に生息するトウヨウミツバチの亜種が日本蜜蜂です。もちろん、環境が違うため、他のトウヨウミツバチとは若干性質が異なるようです。

注1. 日本蜜蜂は、朝鮮半島のトウヨウミツバチと遺伝的にほぼ同じこと、日本国内の地域による遺伝的な差が小さいことが研究からわかっています。また過去の文献などから、朝鮮半島から人間によって持ち込まれたとも推測できる記述があるため、朝鮮半島から持ち込まれて広がったという説もあります。

日本蜜蜂は古くから記録が残っている

江戸時代には、和歌山で日本蜜蜂のハチミツが生産されていたという記録が残っています。

その他、長野や宮崎、京都などの地域で、伝統的に飼育が行われていたようです。これらの地域で行われていたのは、木で作った簡易な箱や、丸太をくりぬいて作った巣箱で飼育し、巣を丸ごと押しつぶして採蜜する方法です。

これらの伝統的な手法は、代々受け継がれることでいまも日本全国に残っています。この本で紹介する方法も、少しずつ進化してはいますが、基本的には昔から伝わっている伝統的な方法です。

なお、今、日本で食べられているハチミツのほぼ全ては、国産ハチミツであっても日本蜜蜂のハチミツではありません。

セイヨウミツバチというハチミツをたくさん生産するミツバチが集めたハチミツです。セイヨウミツバチが明治時代に輸入されるまでは、日本国内ではハチミツといえば日本蜜蜂のものしかありませんでした。

現在では、日本の養蜂場で飼育されているのは、ほぼ全てがセイヨウミツバチです。

日本蜜蜂は、日本の大部分に生息している

日本蜜蜂は野生のミツバチとして、北海道、沖縄、離島を除き、日本中に生息しています。

詳しくは分かりませんが、日本蜜蜂が生息する離島も多いようです。

対馬はニホンミツバチの飼育で有名ですし、長崎の五島列島にも、以前生息していた日本蜜蜂を復活させるプロジェクトがあります。島根県の隠岐島にも、日本蜜蜂が生息しているようです。

また、沖縄には、日本蜜蜂を持ち込もうと活動されている方がいるようで、すでに生息しているのかもしれません。

日本蜜蜂は山の中に住んでいると思われるかもしれませんが、都市部にも生息しています。

日本蜜蜂は、住宅やお墓にもよく巣を作るため、ハチ駆除業者に殺されてしまうことも多いようです。

また、東京の新宿御苑、大阪の大阪城の敷地内など、都会のど真ん中でも日本蜜蜂の自然巣が見つかっています。

都市部の方が、農薬の被害が少ない、天敵が少ない、街路樹、飲み残しのジュースなどの日本蜜蜂の食料が豊富などの理由で、住みやすい場合もあるようです。

日本蜜蜂は、日本中の野菜や果物の受粉に貢献

昆虫に受粉を頼る野菜、果物はたくさんあります。

有名なのは、イチゴやメロンです。アメリカではアーモンドの受粉など、大規模農園で活躍しています。

大きく話題になったミツバチ不足は、ハチミツが取れなくなることではなく、現代の農業にミツバチがなくてはならない存在だからです。

ハウス栽培などの農業の利用では、日本蜜蜂ではなくセイヨウミツバチが使われていますが、セイヨウミツバチは野生には生息していないので、自然界では日本蜜蜂が大きな役割を果たしています。

なお、日本蜜蜂以外にも、花粉媒介を行う昆虫はたくさんいます。庭の梅の実がなるのも、畑のかぼちゃに実がよくつくのも、ビワの木によく実がつくのも、日本蜜蜂を始めとした、花粉媒介を行う多くの昆虫のおかげなのです。

野生に住んでいる日本蜜蜂が知らないうちに家庭菜園や街の植物の受粉に貢献してくれているのです。

日本蜜蜂を飼育していると、近くの人から実りが良くなったという声を聞くことがあります。日本蜜蜂はだいたい2キロメートルほど飛行して蜜を集めると言われていますので、日本蜜蜂を飼育することで広い地域での花粉媒介に貢献できます。

日本蜜蜂の巣の場所は?

日本蜜蜂は野生のミツバチで、どこにでもいるということはこれまでに書いた通りです。

しかし、実際に日本蜜蜂の巣を見たことがある人は少ないと思います。

日本蜜蜂は自然界から営巣に適した場所を探して巣を作ります。木の洞に巣を作ることが多いのです。

人が住むエリアでは、家の床下、天井裏、壁の間などに巣を作ることがあります。小さな入り口があり、ある程度の広さの閉鎖空間であれば巣を作ります。

なお、セイヨウミツバチはオオスズメバチに対抗できないため野生化できません。野生のミツバチの巣を見つけたら、かなり高い確率で日本蜜蜂と考えてよいです。

いくつか日本蜜蜂の巣の例をご紹介します。

民家の庭先のサクラの大木に日本蜜蜂の巣が作られています。日本蜜蜂は、このような木のウロを好むようです。

中に空間ができており巣を作るのに適しています。また、木の割れ目が外敵が侵入しにくい良い出入り口です。

2014年には、大阪城の天守閣のすぐ近くの木に日本蜜蜂の自然巣ができたようです。

大阪城は、大阪の中心部にありますが、このような場所にも日本蜜蜂が生息しているのです。

1cmにも満たない日本蜜蜂がほとんど音も立てずに出入りしているだけなので、このような巣は、人目につく場所でないと、なかなか気づくことはありません。

日本蜜蜂は、小屋に巣を作ることもあります。壁に空間があり、そこにびっしりと日本蜜蜂の巣が作られています。壁と壁の間は広くないので、変わった形状の巣になっています。出入り口は、板の節穴が使われています。

小屋や民家にできる巣の場合、このような予期せずにできた隙間や穴を日本蜜蜂が巣の出入り口として使うことが多いです。

5,6mmの隙間があれば日本蜜蜂は出入りできるため、板と板の隙間から出入りすることも多いです。

困ったことに、日本蜜蜂がお墓に作ることもあります。お墓にできるのは決して珍しくありません。

骨壷を納める部分がちょうど良い大きさの空間になっており、石と石のわずかな隙間がちょうど良い日本蜜蜂の出入り口になっています。

材質が木でなく石でも、日本蜜蜂は巣を作るのです。このようなお墓にできた日本蜜蜂の巣は、お盆前などに発見され、駆除を依頼されることが多いです。

日本蜜蜂を趣味で飼育する人も多い

日本蜜蜂は野生に住んでいます。この日本蜜蜂を巣箱で飼育している方も多くいます。

都市部ではあまりないと思いますが、豊かな山や自然に囲まれた地域では、日本蜜蜂を飼育している方も多いです。

田畑に囲まれた田舎の家では、日本蜜蜂を飼育する場合にも特に近所迷惑などの心配も少ないです。

また、日本蜜蜂を飼育すること自体は、簡単な届出を出せば問題なく、免許などの取得は必要ありません。(都道府県によっては条例によって蜜蜂の飼育条件を定めていますのでご確認ください。)

田舎であれば日本蜜蜂の飼育の障壁は意外と小さいのです。

飼育の方法は、巣箱を用意しておき、そこに日本蜜蜂が入居するのを待ちます。

そして入居すれば、日本蜜蜂が巣を作ってハチミツを貯め始めます。その貯まったハチミツを秋に少し分けてもらいます。

基本的には野生のミツバチなので、人間の手はあまりかかりませんが、まず日本蜜蜂に最初に来てもらうことが最も大変です。

自然が豊かな場所では、趣味で10群れ、20群とたくさんの日本蜜蜂を飼育して、取れたハチミツを道の駅などで販売されている方もおられます。

日本蜜蜂は「引き出す巣箱」ではなく、伝統的な巣箱での飼育が多い

ミツバチの飼育と聞くと、次の写真のように、箱に小さな枠が10個くらい入っていて、それを引き出して、煙を吹きかけたり、遠心分離器でハチミツととったりするのをイメージする人が多いかもしれません。テレビで紹介されているミツバチは、そのほとんどがセイヨウミツバチなのです。

金スマのひとり農業や、DASH村で飼育されていたミツバチは日本蜜蜂でした。しかし、旅番組などで紹介されるものや、ミツバチプロジェクトなどで飼育しているのは、すべてセイヨウミツバチといってもよいです。日本蜜蜂の飼育は、セイヨウミツバチと同じような巣箱を使うこともありますが、多くは伝統的な方法で行われます。

日本蜜蜂の巣箱やはちみつの採り方は、伝統的な手法が広く用いられています。趣味で日本蜜蜂の飼育を行っている人のほとんどは、丸太をくりぬいたり、箱に巣の入り口を切り抜いたシンプルな形状の巣箱を用いて飼育します。

私たちが利用しているのは次のような箱を積み重ねた巣箱です。重箱式巣箱と呼ばれます。趣味で日本蜜蜂の飼育を行う人のほとんどがこの重箱式巣箱を利用しています。この巣箱の中で、日本蜜蜂は自由に巣を作ります。

様々なスタイルがあり、それがまた日本蜜蜂の飼育を面白くしています。いろいろと試行錯誤できるので楽しいのです。

駆除されてしまうことが多い日本蜜蜂の自然巣

こういった日本蜜蜂の巣は、人間に見つかり駆除されてしまうことも多いです。

離れたところから観察するくらいでは刺すことはまずないですが、人通りが多いところでは、何が起こるかわからないので、残すことが難しい場合もあるでしょう。

また、天井裏などの建造物にできた日本蜜蜂の巣からは、ハチミツが落ちたりすることで、建物自体を痛めてしまうこともあります。

このような場合にも、日本蜜蜂の駆除されることは致し方ないと言えます。

私たちはこのような野生の日本蜜蜂の巣を保護する活動も行なっています。

殺虫剤の駆除はとてももったいない。日本蜜蜂を守ろう

「駆除」というと殺虫剤で全て殺してしまう場合が多いですが、これはとてももったいないことです。

数万円ものお金を払って駆除業者に依頼すると、日本蜜蜂は殺虫剤で全滅させられ、日本蜜蜂がせっせと集めたハチミツも殺虫剤まみれで無駄になってしまいます。

日本蜜蜂の群れはとても貴重で、多くの人が日本蜜蜂を捕獲するために必死になって頑張っています。

また、日本蜜蜂のはちみつは、幻と呼ばれるほど貴重なハチミツで、1kgが1万円程度の価値があります。秋には、10kgや20kgのはちみつを蓄えていることも珍しくありません。これらが全部無駄になってしまうのです。

私たちは、依頼があった場合は、殺虫剤は使わずに、野生の日本蜜蜂の巣を巣箱に移動させています。これで、日本ミツバチの群れも飼育することもでき、ハチミツもたくさん採取することができます。

保護の方法は、様々です。掃除機で日本ミツバチを吸い取り、巣を専用の器具で巣箱の中に移しています。

下の動画は、巣から日本ミツバチを吸い取る様子です。わかりやすいように、開放空間に作られた巣で動画を撮影しました。このような開放空間に作られた巣の保護は楽々ですが、屋根裏、天井裏などに作られた自然巣の保護(駆除)は大変です。

日本蜜蜂はなぜハチミツを集める?

ミツバチはなぜハチミツを貯めるのか、そして、せっかく貯めたハチミツを人間がとってしまって大丈夫かという質問を受けることが意外にも多いです。

ミツバチは、花がほとんど咲かず、ミツバチ自身も寒すぎて屋外で活動できない冬を越すための食料としてハチミツを貯めます。

他にも、梅雨の時期の長雨で花の蜜を集められなかったり、夏の花が少ない時にためておいたハチミツを食べているようです。

日本蜜蜂は、だいたい10度を下回ると、外で活動しなくなります。京都府では、12月の半ばくらいから、2月末頃まではほとんど活動できないのです。

この時に、日本蜜蜂は巣箱の中でじっと固まって体温を維持し、冬を越します。

秋までにハチミツをある程度ためておかないと、冬の間にハチミツがなくなってしまい、日本蜜蜂は餓死してしまいます。

人間が全てのハチミツをとってしまうと、もちろん冬は越せません。日本蜜蜂の群れは、調子が良ければ必要以上の量のハチミツをためているので、人間がその一部をもらって、日本蜜蜂が越冬に必要な量は残しておくのです。

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生態についての疑問はミツバチQ&Aで聞いてみよう

ニホンミツバチのQ&Aでは、全国の日本蜜蜂の養蜂家が情報を交換しています。質問すれば、各地の多くの養蜂家さんから回答が寄せられます。生態についての質問があれば、ぜひミツバチQ&Aに投稿してみてください。

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